ディテール・デザインの役割

Topics 2021/02/02

私事で恐縮ですが先日どうにも奥歯が傷むので
歯医者さんに診てもらったところ親知らずを抜くことになりました。

今はすでに抜き終わったのですが、
後でふと親知らずについて、調べてみたところ、
私たち人類の祖先が今よりもはるかに堅い食物を食べる時、
咀嚼しやすくするために生えていた奥歯が親知らずとの事。

昔よりも顎も小さくなった現代人にとっては、
親知らずは本来の機能性を無くし、生え方にもよるようですが、
抜いてしまった方が良い場合が多いようですね。

洋服にも元々は利便性を良くするために機能していたディテールが、
現代では本来の用途で使われることが少なくなっていることが多々あります。

特にミリタリーウェアなどにそういったディテールが多く存在しますが、
前段の親知らずとは違い、洋服の世界では、
本来の機能性を失ったディテールも、
洋服やそれを着用する人の雰囲気を演出する、 “デザイン” として残っています。

スーツにもいくつかそのようなデザイン・ディテールがございますが、
代表的なものに 【チェンジポケット】 があります。

チェンジポケットは、ジャケットの下前側(右側)の腰ポケット上部に付く、
小さめのポケットです。
“チェンジ”とは“硬貨”の意味でチップ文化のあったヨーロッパでは、
チェンジポケットに硬貨を入れてチップを渡す際に活用していました。
また一説にはハンティング用の銃弾を入れておくポケットでもあったという説もあります。

チップ文化とハンティング、共に馴染みのない日本では、
まさに本来の機能性を失ったディテールと言えます。

本来の意味を失ったチェンジポケットですが、ほとんどのオーダー屋さんでは、
オーダーデザインの選択肢に含まれています。
それは本来の役割とは別に、
洋服やそれを着る人の “雰囲気を演出する” という大切な役割を担ってるからです。

チェンジポケットはその出自から、どこか紳士的でクラシカル(古典的)なムードを醸すことができます。
私もフランネルのチョークストライプや、ダブルブレストなどで、
威厳のあるスーツを作りたい際にはよりクラシカルにみせるために良く採用します。

キャッシュレス化の進む現代では、今後ますますチェンジポケットは、
本来の役割を果たすことはないでしょう。
しかし、親知らずとは違って不要な機能にはならず、
むしろ、雰囲気の演出という洋服を作る上でも大切な役割として、
残り続けます。

オーダースーツはお客様のお身体に合わせるだけでなく、
そういった数々のデザイン・ディテールを組み合わせて、
お客様自身の雰囲気をより良く演出する事ができます。

ご興味のある方は是非ご相談くださいませ。

米田