誂えるということ

News 2019/09/11

本格的な秋を前にして、洋服を扱うショップの店先には「今年の秋冬」をうたった新商品が並びます。
それに合わせて、多くの消費者が、秋には秋の、冬には冬の洋服を買うわけです。
需要予測をもとに、「アパレル」と呼ばれる規模の大きい洋服メーカーは大量のかつ多彩な商品をショップに供給します。そして、シーズンの終盤には需要予測がハズレた大量の在庫商品を、“バーゲン”という手法で処分します。
これには個人的見解が入りますが、「シーズン初頭の値札は何だったのだろう?定価の意味って何?」さらには、「そもそも洋服の価値って何?」という強烈な疑問をよそに、アパレルはリスクヘッジのため、多かれ少なかれそうした販売方法を取らざるを得ません。
社会はこうして回っているようです。
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一方、注文服の場合はどうでしょう。
当店では、仕立て上がり納期までのスケジュールを考え、夏には秋の、秋には冬のスーツをオーダーされる方が頻繁に訪れます。
また、長期の海外出張で、日本とは異なる季節感の国に行かれる方もいらっしゃいます。例えば、ある方はフィンランドに長期出張の前の9月に真冬のスーツを採寸にいらしてご注文されています。

私たちテーラーのような受注ビジネスでは、基本的にお客様の都合が優先されます。
「シーズンだから」という発想よりも、お客様の『次に着たい服』をオーダーして楽しめる仕事をしています。
もちろん、トレンドとは主にメディアや大手アパレル企業が打ち出すものですので、お客様の好みと誤差もあれば差違も顕著です。
時代の感覚はお客様次第。流行と真逆なセンスもまさに「あり」。

それを後押しする仕事をしてまいりたいと日々励んでおります。

吉澤

P.S.
昨日、チェスターコートのオーダーを頂きました。ありがとうございました。