テーラーの店先でよく見かけられる様子として、採寸があります。オーダースーツならではの仕事を端的に表すシーンだと思います。この「採寸」という作業、文字通り、寸法を採っています。この「採寸」は寸法を採っているように見えて、実は洋服づくりの設計工程でもあります。
こちらサルトリアプロメッサの場合、採寸箇所は着丈、袖丈、肩幅、身幅はもちろん、肩傾斜やアームホールの付き方、反身・屈伸といったところ。パンツについては総丈、全体のシルエットの変更、平尻・出尻、O脚補正まで、いわゆる巷のテーラーや百貨店がパターン・オーダーと呼んでいる商品に比して、明らかに採寸箇所が多いと言えます。
ではなぜここまで細かな採寸をするのか。私的見解も多分に盛り込み申し上げると、“採寸が設計”と申し上げたように、お客様の身体形状を把握し、課題を発見し、それを解決することが本当の目的であり狙いなのです。そのためにはある一定の情報量が揃っていないと、お客様を良く見せるためのスーツづくりはできません。袖丈のサイズが合っている、肩幅が合っている、ウエストが合っている・・というサイジングの情報は実は表層のデータなのです。
採寸から得たい情報の本質は、着られる方の体型的な問題点や身体的特徴をいかに把握するかにあります。
誤解を恐れず申し上げます。体型的な問題点と表現していますが、問題がないお客様など100%存在しません。理想的な体型に見えても、何かしら問題点を抱えているのが人間です。実はそれが「問題点ではなく、個性だ」と認識することから注文服づくりは始まるのです。
採寸をする仕事人を英語でフィッターと言いますが、洋服をお客様の身体にフィットさせることが仕事ではありません。課題山積の身体形状にそのままフィット(適合)させていたら、とんでもなく不格好な洋服ができてしまう可能性があるからです。
フィッターが狙うのは体型的問題点を見つけ出し、補正し、“まるで理想の体型を持っているように”見せながら、それでいて快適な着心地を提供することにあると考えます。
吉澤